相続は心の相談

我が子が亡くなった訃報を約1か月後に、義理の娘から通知をされた母から『心の葛藤』に関する相談

【ポイント】
☑ 相続相談は『法律だけで』で回答をしてはいけない。
☑ 相談者の心・気持ちを受け止めて、何が最善かを助言することが大切

【今回の相談についての経緯】
今回のご相談者は90歳代の女性。

夫が元気なころに、夫婦で私に遺言書作成の依頼をされたことがあった。ご高齢であるため、御自宅に訪問して相談のご対応をさせた頂いた事案をご紹介します。

※個人情報保護の観点から、一部内容を変更しています。

長男が他界
2022年6月に長男様が亡くなっていたが、その妻から訃報があったのが、約1か月経過後の7月下旬であった。突然の訃報とあまりの不義理に我を失い、悲しみのため動揺をしてしまった。

お中元
よくお聞きすると、この長男の妻からお中元が届いたらしく、7月上旬にお礼のご連絡をしたが、その際に長男が亡くなったことは知らされなかった…。なぜ、この時に息子が亡くなったことを知らせてくれなかったのかと憤りを覚えたようであった。

ご相談者の心の葛藤
・愛する長男が亡くなってから約1か月後に訃報を受けたため、息子の顔が見れなかった無念と悲しさがあり、すでにお寺に合祀されてしまったという事実を受け入れられず、親族に相談したところ、
『非常識も甚だしい。』
『そんな不義理な嫁は許されるべきでない。遺言書を再び作成したほうが良い。』
と言われたが、自分の年齢と体力、経済力を考えると、二の足を踏んでいて日々悶々と悩んでいた。

・食欲も低下してしまい、1か月で体重が10㌔も減少し、医者からも心配されている健康状態となっているらしかった。

・せめて、お骨の一部でも自分と一緒のお墓に入れたかったが、それもかなわないので、とても悲しいとのご心情を何度も口にした。

亡くなった長男の妻から相続に関する要望があり…。
・挙句の果てに、この義理の娘から、(義理の妻らが居住している)不動産を孫に相続させてほしいと要望があったらしく、訃報が遅れた憤りもあって、あまりにも図々しい・非常識だと感じてしまい、怒りがいっそうこみ上げてしまったとお話をされた。

私に相談をしようとした理由
・身内の恥をさらすようで他人には相談できず、私からの暑中見舞いが届き、『専門家である高橋先生に相談しよう。』と考えたらしかった。

【ご相談に対してのアドバイス】
・ご相談者宛にお中元を贈ったということは、わざと長男様が亡くなったことを1か月放置したとは考えにくいであろう。

・きっと夫を亡くした喪失感や長年の看病疲れから、家族葬をした後、何もする気力が湧かず、訃報が遅れたのではと考えるのが自然かと思われる。

・また、ご相談者様が再び遺言書を作成すると、お金が掛かるため貴重な老後の資金が減少してしまうし、精神的にも疲れるので、問題の解決にはならないでしょう。

大切な長男様を今まで看病してもらったことに感謝したうえで、訃報が遅れたことは水に流すほうが、全ての方々にとって最も良い解決策なのではないでしょうかとアドバイスをしたところ・・・。

【ご相談者のコメント】
・誰にも相談できず、一人で悶々としていたところ、最適なアドバイスを頂き、心の葛藤がなくなり、とても気持ちが楽になりました。本当に有難うございますと泣きながら感謝をされました。

・怒りや恨み、憤りなどの葛藤がなくなり、心の整理が完全にできたようでした。

【最後に】
相続の相談では、司法書士として法律面から解決策を伝えることが最善とは限らず、ご相談者の諸事情を踏まえてアドバイスをすることがとても大切であると身に染みた事案でした。

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