昨日の相談者は、亡くなった叔母様が、公証人により遺言書を作成してもらったが、どうも内容に不安があるので、相談をしたいとご来所をされました。
遺言書の概要は、次のとおりでした。
第1条 神戸市にある不動産は、居住をしている姉(78歳)が相続する。
第2条 仮に姉が先に亡くなった場合、姉の子供達(遺言者の姪達)が相続する。 第3条 遺言執行者を姉とする。 第4条 遺言執行者の権限・・・ |
遺言書を見た瞬間に、内容の不備や不適切な内容に気づきました。
まず「内容の不備」ですが、山口県にも土地があるにもかかわらず、遺言書に記載されていない点です。
また、肝心の預貯金や株式を誰が相続するかも記載されていません。
(遺言書に書いていない以上、これらの財産は、相続人による遺産分割の協議により決めることになります。)
不適切な内容としては、78歳とご高齢であるお姉様を、遺言執行者に指定している点です。
相談者にお聞きすると、遺言者の兄(相談者の伯父)はパーキンソン病であり、話し合いができない状況(遺産分割協議ができない状況)とのことでした。
そうすると、家庭裁判所に対して、成年後見人を選任してもらう手続きを踏まないと、山口県の土地や預貯金、株式の遺産分割協議が進められないことになります。
公証役場の公証人に遺言書の作成を頼んだ結果、内容の不備、不適切な内容があったため、せっかく遺言書を書いたにもかかわらず、亡くなった後の相続手続きが円滑にできない事態となりました。
なぜ、公証人という法律の専門家に遺言書作成を頼んだのに、このような結果となるのか疑問に思う方も多いでしょう。
原因は、公証人が「公務員」であるからです。(日本公証人連合会HPを参照。)
公証人は、「公務員」である以上、遺言の内容につき、「あなたの場合は、こうした方が良いでしょう。」などと提案をすることが積極的にはできないのです。
結局は、弁護士や司法書士に遺言書の作成を依頼し、最も適切な内容の遺言書(案)を作成してもらったうえで、公証役場にて認証を受ける方法が最も安全な遺言書の作成方法です。