
~即決和解(訴え提起前の和解)の活用事例~
即決和解を活用して解決をした事例をご紹介します。
【依頼者の悩み、焦燥感】
依頼者は、親の代から続いている第三者による土地の不法占拠に悩まされていました。
親所有の土地上に、勝手に未登記家屋を建築され、長年に渡り、親所有の土地を不法に占拠されている状態が継続していたからです。
親が亡くなり、絶対に自分の代で解決し、子供の代に持ち越したくないと覚悟を決めたが、不法占拠者に対し、建物を解体し、土地を明け渡して欲しいと伝えても、一応は『分かりました。』とは言うらしいが、具体的な行動(建物解体、転居)は何もしないので、途方に暮れていました。
依頼者からは「土地の明渡しの合意書を作成して欲しいです。」と言われましたが、私は不法占拠者が“分かりました”と言ってくれる点に着目しました。
合意が成立しそうな場合の解決策は次の3つが考えられます。
❷公正証書にて、土地の明渡しの合意書を作成する方法
❸訴え提起前の和解(「即決和解」とも言います。)を利用する方法
私が提案をしたのは❸の即決和解でした。
【❶の検討】
長い間、他人の土地を不法に占拠をしている方であるため、不誠実であろうから、土地の明渡しの条件や期限を記載した合意書を作成しても、もし約束を反故にされた場合には、訴訟により土地明渡しを命ずる判決を得たうえで、強制執行手続きをしなくてはならず、有効な手段とは思えませんでした。
【❷の検討】
土地の明渡しの条件や期日を記載した公正証書を作成する方法もあり得るのですが、公正証書は金銭の支払いに関してのみ強制力が認められているにすぎず、もし不法占拠者が公正証書で定めた明渡し期限を過ぎても建物解体や転居をしない場合は、建物収去、土地の明渡しに関する合意について公正証書を作成しても、土地の明渡し等の強制執行はできず、先ほどと同様に裁判により判決を得たうえで、強制執行手続きをする必要があり、現実的でないように思えました。
そこで、❸の即決和解を利用することが最善かと感じたわけです。
【即決和解とは?】
この即決和解は、裁判所による和解のひとつで、民事上の争いがある当事者が、双方の合意による解決の見込みがある場合に、判決を求める訴訟を提起する前に、簡易裁判所に和解の申立てをし、和解を成立させて紛争を解決する手続です。
特徴として、当事者間に合意があり、裁判所がその合意を相当と認めた場合に和解が成立し、合意内容が和解調書に記載されれば、確定判決と同一の効力を有することになります。(=つまり、和解調書により強制執行手続きが可能となります。)
【依頼から和解期日まで】
私の提案により、即決和解の申立書作成の依頼を受任しました。
過去の経験から、相手が協力をする姿勢を見せているが、具体的な行動は一切しない場合には、協力をしてもらう内容のハードルを低くし、少しずつ解決に導いていくことが功を奏することが多々あることを認識していた為、まずは内容の説明のために、依頼者に同伴し、不法占拠者と会いに行きました。
不法占拠者には、(1)所有権も賃借権もなく、土地の占有権原がない点、(2)よって、不法占拠に該当すること、(3)建物収去をし、土地の明渡しをしてほしい旨を伝えると、“了解です”という回答を容易に頂けました。
さらに、依頼者と不法占拠者に即決和解手続きの説明をし、和解条項案を見せて、この段階で合意が成立していたので、即決和解の申立てを簡易裁判所にしました。
未登記家屋があることから、不動産の表示に苦労しましたが、和解期日には、依頼者も不法占拠者も出席し、どうにか希望通りの和解調書を作成してもらい、無事に解決をしました。
【まとめ】
賃料滞納により建物を明け渡して欲しい場合、土地の明渡しをして欲しい場合に、ある程度合意が得られている状況であれば、即決和解は十分に検討の余地があります。
具体的には、個々の事情により解決策が異なりますので、まずはお気軽にご相談下さい。






